この記事の結論
「判断に使うデータかどうか」で線を引きます。勤怠や経費のように業務の形が決まっているものはパッケージ製品、受発注・在庫・原価のように自社の判断材料になるものは自社で持つ、という分け方が現実的です。
まずは、これだけ
- 業務ごとに分けて決める。全部をどちらかに寄せない
- 記録の粒度を契約前に確認する。集計は後から変えられるが、記録していないデータは後から作れない
- やめたときに出せる形式・項目・期限を、契約書で確認する
システムを比べるとき、軸はたいてい機能と価格になります。ただ、工場をまわって伺うと、数年たって効いてくるのはどんなデータが、どんな形で手元に残るかでした。
結論から書きます。判断の分かれ目は、そのデータを会社が判断に使うかどうかの一点です。
実際に伺った話
「解約したら、振り出しに戻る」
- 受注・請求・出荷・原料の管理が、紙とExcelとFAXに分かれている
- Excel同士がつながっておらず、同じ数字を何度も打ち直している
- パッケージ製品を検討したが、契約を続ける前提に引っかかっている
- 「同じ額を払うなら、自社に残るものにしたい」という趣旨だった
この方が引っかかっていたのは、金額そのものではありませんでした。払い終えたあとに何が残るかです。パッケージ製品をやめれば、蓄えたデータも、慣れたオペレーションも手元には残りません。
そのデータは、会社の判断に使いますか?
- 使わない パッケージ製品で十分 勤怠や経費精算のように、業界標準のやり方で回る業務。素早く導入でき、保守も任せられます。
- 使う 自社の形で持つ 受発注・在庫・原価のように、自社の判断の材料になる業務。粒度も項目も自社で決められます。
何が違うのか
パッケージ製品でも、データは貯まります。ただし貯まるのはその製品が想定した形のデータです。
たとえば原価。製品が「品目ごとの原価」しか持たない設計であれば、ロットごとや取引先ごとに見たくなっても、そもそも元データがありません。あとから集計方法を変えるという話ではなく、記録されていないものは集計できないという話です。
| パッケージ製品 | 自社で持つ | |
|---|---|---|
| 残るデータ | 製品の仕様どおり | 必要な粒度・項目で |
| 分析・他部門 | 仕様の範囲内 | そのまま回せる |
| 機能の追加 | 要望として出す | 必要な順に足す |
| 他システム連携 | 用意された範囲で | 必要な相手と組める |
| やめたとき | 仕組みは残らない | 手元に残る |
差が出るのは、事業が動いたとき
導入直後は差が出ません。いま困っていることは、どちらでも解決するからです。差が出るのは、会社が次の一手を打とうとしたときです。
- 導入直後差は出ない
- 1年後足したい機能が出てくる
- 3年後分析したい形と合わない
- 5年後打ち手が仕様に縛られる
食品関連企業では、こういう場面です
-
新しい商品を出す
- 製品仕様
- 規格や単位の持ち方が合わず、別のExcelで管理が増える
- 自社
- 商品マスタに項目を足して吸収できる
-
取引先の要求が変わる
- 製品仕様
- 指定の帳票・データ形式に、毎回手作業で合わせる
- 自社
- 出力を追加して、その形で出す
-
原価の見方を変える
- 製品仕様
- 集計の単位が決まっていて、元データも足りない
- 自社
- 見たい単位で記録し、集計し直せる
検討中にできる、具体的な確認
導入前でも確かめられることがあります。次の4つは、営業担当ではなく提供元の技術側に確認すると、答えが具体的になります。
- 01データのエクスポート仕様をもらうどの項目を、どの形式で出せるか。画面表示と出力できる項目は別です
- 02いちばん細かい記録の単位を聞くロット・日次・取引先別。あとから細かくはできません
- 03外部から読める口があるか聞くAPIやDBへの接続可否。分析ツールや他システムに回せるかが決まります
- 04解約後のデータの扱いを契約書で見る返却の形式と期限。口頭確認では条件が残りません
自社で持つと決めた場合の進め方
最初から全部を作る必要はありません。実際のご相談でも、いちばん困っている業務ひとつから始めることがほとんどです。
- いちばん困っている業務受注か在庫か、ひとつ選ぶ
- データの持ち方を決めるここが後から効く
- 残す既存システムと連携会計などは変えない
- 次に効く業務を足す使いながら決める
持ち帰っていただきたい3つ
- 業務ごとに分けて決める判断に使うデータかどうかで線を引きます。勤怠や経費はパッケージ製品、受発注・在庫・原価は自社、という分け方が現実的です。
- 記録の粒度を、いま確認する集計方法は後から変えられますが、記録されていないデータは後から作れません。いちばん細かい単位を必ず聞いてください。
- やめたときの条件を、契約書で確認する出力できる形式・項目・期限。契約前なら交渉できますが、後からは条件を変えられません。
よくあるご質問
Qパッケージ製品は選んではいけないのですか。
Aいいえ。業務の形が決まっていて、自社の判断材料にしないものはパッケージ製品が適しています。勤怠や経費がその例です。分けて考えることをおすすめしています。
Qデータが残るかどうかは、どこを見れば分かりますか。
A契約書とサービス仕様書の、解約時のデータ取り扱いの項目です。出力できる形式(CSVなど)、出力できる項目の範囲、出力できる期限の3点を確認してください。
Q記録の粒度とは何ですか。
A1件ごとに記録するのか、1日分をまとめて記録するのか、といった細かさのことです。日単位でしか記録していないデータから、後から時間単位の分析はできません。いちばん細かい単位を必ず確認してください。
Qいま使っているパッケージ製品から、乗り換えは必要ですか。
A必ずしも必要ありません。会計や販売管理のように変えたくない仕組みは残したまま、必要なところだけ自社で持ち、連携させる進め方もあります。
Q自社開発はまとまった費用がかかるのではないですか。
Aシステム開発は規模に応じた費用がかかります。ただ、対象を絞って必要なところから始め、使いながら足していく進め方も選べます。範囲の決め方からご相談ください。
Q最初にどこから手をつけるとよいですか。
Aいちばん困っている業務をひとつ挙げるところからで大丈夫です。受発注か在庫のどちらかから始めることが多く、要件が決まっていない段階でもご相談いただけます。
まとめ
- 比較すべきは機能と価格ではなく、5年後に何がどんな形で残るか
- 勤怠・経費はパッケージ製品、受発注・在庫・原価は自社、という分け方から考える
- 記録の粒度と、解約時のデータ出力条件は、契約前にしか決められない
この記事は、食品工場をまわって伺った話をもとにしています。実際にどこから始めるかは、いまの業務と使っている仕組みを確認したうえでご提案します。要件が決まっていない段階でもご相談いただけます。